上京してデザイナーとして働いていた有野りん子．しかし仕事にも東京暮らしにも限界を感じ，地元の静岡でUターン就職することになりました．するとそこでは，地元のテキトーな大学へ進んでテキトーな会社に就職し，かつてりん子が軽蔑していた友人たちが家族を持って幸せに暮らしていたのです．あれ？勉強も仕事もバリバリこなしてきた自分より，どうして遊んで暮らしていた彼らのほうが幸せになっているの？

　本作では，不器用な生き方をするりん子のもどかしい日常が描かれます．また，左遷で静岡に飛ばされた東京生まれ・東京育ちの雲春がメインキャラクターとなり，東京と静岡とのギャップに驚いたり呆れたりする様子も描かれます．

　『久々に凄い作品が出てきたな！』と興奮してしまうほどの良作だと思います．何と言ってもテーマが面白いです．都会で必死に働くより地元で遊びながら暮らしたほうが人生幸せだなんて・・・現代社会にぴったりなテーマですよね．この作品には，とにかく共感させられました．私も実家を離れて一人暮らしをしていますが，仕事で忙しい毎日を送っています．また，りん子ほどではないにしろ，生真面目な性格で損をしていると思っています．そんなに頑張らなくても，地元でのんびり暮らしたほうが幸せじゃないのかな...とりん子のような気持ちになることがあります．なのでりん子のことが人事に思えず，つい応援したくなってしまうのです．

　また，登場キャラクターの一人である元ブラック企業社員のハッチは登場する度に強烈なブラックネタを投下してきます．社畜として過ごしてきた彼女な目の輝きを失ってしまっていますが，なんとか彼女は幸せになってほしいと願わずにいられません．

　さて，このように紹介するとシリアスだけの作品のように思われてしまいそうですが，そんなことはありません．これらはちょっとエッジのきいたジョークです．本作には静岡のご当地ネタ（特にお茶・富士山・家康ネタ）が満載で，他県の人が読んでもクスリと笑えます．また，作品全体を通してセリフひとつひとつのセンスが素晴らしいです．特に脳内お花畑のお嬢様に対するキツい嫌味発言は面白いです．

私が選ぶ

ザ・ベスト

 1巻53ページ左

雲春のネタから選びました．私，彼のことが好きなんですよ．左遷されて静岡を満喫しているなんて，羨ましい生き方です．