バーバーハーバー

作者:小池田マヤ

巻数:8巻(完結)

  *「バーバーハーバー」7巻

   「バーバーハーバー NG」1巻

出版社:講談社

掲載誌:モーニング→e-manga(NG)

発売日:2002/4/23~2007/11/22

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内容

 大阪の千里にあるヘアサロン「みなと」のマスター,馬場皆人.そして実家の千里を離れて東京で勤務しているOL,鹿崎東子.本作は,このふたりの出逢い~恋愛~結婚を描いた,ほのぼのラブストーリーです.

 皆人は30過ぎにしてハゲた頭をバンダナで隠す,一見冴えない男です.いつもボーっとしては,”メルへん”な妄想に浸り,「ええなあ……」とつぶやく癖があります.しかし彼の優しい雰囲気に包まれ,東子は皆人に乙女のような恋をするのです.

 この作品のシンボルと言えるのが,太陽の塔です.皆人は太陽の塔が大好きで,東子のことを「塔子さん」と呼んでいたほど.万博記念公園で重要なイベントが起こることも多いです.

 主人公が皆人と東子の二人であるため,皆人サイドの話と東子サイドの話が別々に描かれます.さらにデートの時などでは,2話続けて同じシーンを別の視点で描くという手法も使われます.

 また,皆人と東子それぞれの家族や友人たちも多く登場します.作中では彼ら(彼女ら)の交友や恋愛についても描かれており,特に物語の終盤はそれらが深く掘り下げられます.そして,最後は全員がハッピーエンドを迎えるの…でした…

雑感

 上の内容では,終盤部分の内容までを述べています.こうした紹介はネタバレになるので普段は避けているのですが,本作なら問題ないだろうと判断しました.なぜなら本作は,読者の期待を裏切らず,誰も不幸にならない作品だからです.皆人は冴えないメルへん男(さらにハゲ)ですが,人一倍真面目な努力家です.おそらく読者のほぼ全員が,皆人に好感を持ち,幸せになってほしいと思うでしょう.

 本作には,ドラマティックな展開はありません.現実に近くで起こっていそうなストーリーとなっています.太陽の塔など千里ならではの要素があちこちに盛り込められており,物語の舞台構成が完成されているため,よりストーリーに現実感が湧くのだと思います.ちなみに小池田マヤ先生は千里育ちだそうです.

 小池田マヤ先生の4コマ漫画は,多彩な表現が用いられるのが特徴です.本作でも,コマの外のスペースに描かれた絵で華を添えたり,4コマに収まらないネタを加えたりと幅広く活用しています.さらに,4コマの配置そのものが通常とは異なります.通常は4つのコマを縦に並べて1本ですが,本作は2×2の4コマで1本となり,1ページに2本の4コマが上下に並んでいます.この配置によって,コマの外のスペースに絵を入れて活用しやすくなっています.

 東子サイドの話では東子の視点で物語が描かれ,東子の心の声が綴られています.しかし皆人サイドの話では,皆人の心の声はほとんど表現されていません(メルへんな妄想は描かれていますが).そのため,皆人はたまにミステリアスな雰囲気を感じさせます.読者からすると,皆人は何を考えているのかと思い巡らせることができます.

 続巻の「バーバーハーバー NG」は,バーバーハーバーの完結から10年後の世界を描いたものです.皆人と東子,その友人たちの子供が登場します.なお,NGとはNext Generationの略です.

小ネタ

 バーバーハーバーが世間に知らしめたもの.それは「チョキちゃん」でしょう.チョキちゃんとは,理容店の入り口でよく見かける,ハサミを持ったサインポールのキャラクターです.チョキちゃんは組合に加入している店の印なのですが,バーバーハーバーでその意味を初めて知った人が多かったようです.このことが評価され,小池田マヤ先生は「全理連第1回チョキちゃん大賞」を受賞しています.

小ネタ2

 5巻から登場する東子の父ですが,実は1巻でも東子の回想の中に登場しています.ただし,そのときの顔は全く違い,別人になっています. 

私が選ぶ

ザ・ベスト

6巻86ページ

本作は笑いは小気味良いものが多いのですが,爆笑ネタもたまに混じっています.その代表がこのシーン.マスターとリラックスムードで話せる関係になった東子が,うっかり「禁句」を口にしてしまう瞬間です.

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