アットホーム・ロマンス

作者:風華チルヲ

巻数:3巻(完結)

出版社:芳文社

掲載誌:まんがタイムきららキャラット

発売日:2007/8/27~2009/10/27

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内容

 主人公・守村竜太朗は極度のマザコン,そして父・勇は経営するプロレス道場の生徒がいなくなって無職に.そんな二人に強くなってもらおうと,母・明美は実家へ帰ってしまいます.家を任されたのは姉・暁子ですが,彼女もまた極度のブラコンだったのです.

 母が家を出てから,竜太朗のマザコン以上に暁子のブラコンっぷりがエスカレートしていきます.二人でお風呂に入ったり同じ布団で寝るのが日常になっていく中で,竜太朗はシスコン(姉魂)にも目覚めてしまいます.そして,あくまでも「プレイ」であったはずの姉弟関係が,いつしか「本気」に変わってゆくのです…

 物語の終盤には,苦悩しつつも弟の幸せを願う暁子の想い,そして竜太朗の決意と成長がじっくりと描かれます.竜太朗が辿り着いた「本当のマザコン」とは?その答えを示すため,母と再会する時がやってきます.

雑感

 この作品を紹介する上で,まず最初に言っておきたいことがあります.

 

 「とにかく最後まで読んでみてください!」

 

 と言うのも,本作は序盤と終盤で雰囲気が全く異なるのです.序盤は竜太朗と暁子の暴走するマザコン・ブラコンっぷりに加え,脇役たちの強烈な嗜好がぶつかり合う,変態ギャグ作品と言える内容です.また,肌色描写も多分にあります.…こういう説明をすると,中には苦手意識を持ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんね.しかし,終盤はこれまでとは一変して読み応えのあるストーリー展開となります.

 序盤ではギャグとして表現されていたマザコン・シスコンですが,終盤では竜太朗と暁子がその意味を深く考え,悩む様が描かれます.ここまで読み進めば,本作に抱く印象はガラリと変わるでしょう.そして何と言っても本作最大の魅力は,竜太朗の成長だと思います.この成長過程がとても現実的に描かれるので,自然と感情移入しながら読むことができます.

 また,竜太朗と暁子だけでなく,父と母の心のうちも明らかになり,涙腺の弱い方は涙が止まらなくなるかもしれません.私は本作を何度読んでも,最終回付近で泣いてしまいます.1~2巻を読んでいるうちは,よもやアットホーム・ロマンスで泣くとは思いもしませんでした.

 心にしみるセリフも数多くありますが,その中に「私は姉 姉は私!!」というセリフがあります.これは1巻と3巻で暁子が2回発したセリフですが,その意味は1回目と2回目で全く違います.ぜひそこにも注目して読んでみてください.

小ネタ

 本作の舞台は名古屋市です.名古屋駅がはっきりと描かれている他,電話番号が052から始まったり,名古屋に実在するお嬢様大学名をもじった大学が登場したりします.

私が選ぶ

ザ・ベスト

3巻106ページ右

最終回で再開した母に,竜太朗が辿り着いた「自分の生き様」を伝える名シーンです.このシーンは本当に泣きました.おそらく,次に読むときも泣くでしょう.

この作品が

好きなら!

 鬼灯さん家のアネキ/五十嵐藍(角川書店)