ゆとりの町長

作者:小坂俊史

巻数:1巻(完結)

出版社:芳文社

掲載誌:まんがタイムオリジナル

発売日:2018/8/7


内容

 東京から地元の町に出戻りしてきた能天気ニート,町本ゆとり(24).ちょっとした勘違いが原因で,彼女は次期町長に立候補することを決意します.そしてサポート役を買って出てくれた有能ニート,浦野かなめと二人三脚で選挙の準備を進めていきます.

 「今の町に魅力を感じられない.だから私が好きと思える町を作っていきたい」 この気持ちがゆとりが町長選挙に出馬する理由でした.ゆとりは政治の知識など全く持ち合わせてない,ただの素人です.しかし,この言葉に共感する若者からの支持を集めます.さらに高齢者や過疎地域の住民とも交流を広げていき,ゆとりの存在は現町長も無視できないものに拡大していくのです.

 そして,ついに迎えた町長選挙.ゆとりは見事当選を果たすことができるのか...?

雑感

 私は帰省中にこの本を実家に持っていったのですが,家族みんなが夢中になって読んでくれました.「選挙」というお固いテーマでも,小坂先生の手にかかればこんなにも面白い作品に仕上がるのです!

 なんといいますか,この作品は読んでいて全く「違和感」を感じないんですよね.違和感というのは,「いやそれはおかしいやろ」「いくらフィクションでもそれはアカンやつや」みたいな,物語を楽しんでいるのに急に現実に引き戻されるような感覚です.そういうのがなく,とても自然に物語が頭の中に入っていくのです.これができる漫画家は本当にすごい!

 主人公のゆとりが能天気なのであまり気にならずにいられますが,「え?そうなの?」と驚く選挙のルールなども知ることができ,勉強になります.特に,投票数の1割を獲得できないと50万円没取される制度があることなんて知らなかったです.

 そして,浦野かなめの敏腕ぶりは読者目線でも頼りになるなと感じました.作中で明らかになりますが,彼女は現町長の元秘書だったのです.選挙戦直前に彼女の打った一手が,選局を大きく揺さぶることになるんですが,これはぜひ本作を読んで確かめて欲しいところ.これを見たとき,私はむっちゃワクワクしました!